発想を変えてみよう アメリカvs日本の販売の仕方

発想の元にある本質は違う 

2012年6月6

fireworks-064.jpg1980年代の半ばに、アメリカに出張していた時に感じた事ですが、商売での「アメリカ人の考え方」と「日本人の考え方」の発想には大きな違いがあります。

 ここでは、例に取って説明したいと思います。
 私が当時(ソニー時代)担当していた記録メディア製品は、販路が非常に多岐にわたっていました。 
電気店、ミュージックショップ、カメラショップ、ブックストア、レンタルビデオショップ、ディスカウントショップ、ホームセンター等数え切れない販路で販売されていました。
全世界的には、同じような販路で販売されるのですが、その国を訪れると打合せが終わった後に市場調査に出かけることが多くありました。 
 アメリカのミュージックショップに行った時に、「違う!」と感じたことがありますが それは新しくリリースされたレコードやCDの発売価格です。 
 アメリカでは、CDの価格は多少の価格レンジはありますが、有名アーチストのCD等ですと12.99ドルなどで販売されているお店が殆どです。また、ディズニーなどのビデオソフトも販売されますが、同じようなプライズゾーンで販売されてゆきます。 勿論アーチスト等で価格の差はあったりしますが、大きくは違いません。
 しかし、驚いたポイントは「新しく出る新譜」の時の価格が、9.99ドル等の安い価格で市場に出てくるのです。
いわゆるプロモーションの一環なのですが、新譜として出る時に安い価格で販売されて、最初の3ケ月程の期間が終わると 今度は値上げになり12.99ドルに変わって行くのです。 
 これを見た瞬間には、少し驚きましたが考えてみると「なるほど それも効果的だなあ」と思うようになりました。 

 ここに「アメリカ人の発想」と「日本人の発想」の違い、「アメリカでの商習慣」と「日本の商習慣」が大きく違っているのですが、根本的に違うのは前者の方です。

 日本人の発想は、「旬(しゅん)」の時が一番高く売れる時で、なるべく「旬」の期間が長くて、高値で販売して出来るだけ利益を多く取りたいという発想で、「旬」の時期が過ぎれば、殆どの製品(CDに限らず)が安くなってゆきます。
経済学の本などでも、利益最大にするためにはその方法が良く書かれてあります。

 しかし、アメリカ人の発想はかなり違います。 
 市場がアメリカだけでなく全世界を考えているという背景、音楽産業の規模が非常に大きい事、大量生産と消費国家の性格、宣伝やプロモーションが大好きな国民であること、プロモーションの規模も大きくマルチメディアで大投資することなどがベースにはあります。
 CDやビデオソフトは、人が買って「口コミ」などで評判が伝搬する性質の商品です。
ですから、新譜が出る時(一番旬な時)に大量に販売できるように、「販売価格」を安くして、少しでも多くの人が「購入のきっかけ」になるようにするのです。 
実績のある歌手(例えば故マイケルジャクソン)などであれば、ミュージックショップでも過去の実績もありますから 「その価格であれば それは売れる」と思って 大量に仕入れ、お店でも大きなコーナーを作って大プロモーションを仕掛けて行きます。
 レコード会社も、思い切った規模での大量生産をしてゆきますので、CDやビデオソフトなどの生産コストも圧倒的に低くなってきて、価格を落としても「利益率」が上がってきて、「利益」も大きくなってきます。 

「旬」な時に安い価格で販売することによって、生産、宣伝、販売の集中投下をかけることで、人に買ってもらい「口コミ」がさらに大きな規模になって伝搬してゆき、そのCDをミリオンセラーに押し上げて行く原動力になってゆく方法を取っています。
 ここにアメリカ人のダイナミックなマーケティングの本質があります。

 CDやビデオソフトだけではなく色々な新規の商品でも、このような「旬」の時のプロモーション価格は多く見受けます。
 そして、爆発的に売れたプロモーション価格の商品が3ケ月位を過ぎると、見事に市場では「通常価格」の12.99ドル(例)などに変わってゆきます。(違法でも何でもありません)
 この通常価格の時期では、生産規模もプロモーション時期に比べると生産コストも上がりますが、高い価格で販売されてゆくので利益も確保されるわけです。

 特別なプロモーション価格で 「買ってみようか」と動機づけをして「中々いい」と口コミで宣伝効果を広げて 販売数量の最大を狙って行くのがアメリカ人の発想です。 しかも、大規模の生産と宣伝の集中でコストも下げています。

 一方 日本人は 「このアーチストの販売数量はこれくらいだから、その中で『利益の最大化』を図ろう」という発想で、「旬」の時期には高い価格の設定になっています。
 日本で販売する商品の多くは、殆どこの発想です。
電気製品やファッションなども同じです、新しい物が出た時が「一番高い」 売れなくなってきたり、競合が出てきた時に販売価格が下がってきます。 勿論アメリカにも これと同じようなやり方の商品がいっぱいあります。

 「ダイナミックな発想と行動で 売上も利益も最大限を狙う」というアメリカ人の発想と
「利益を最大限にするために、『旬』の時に高くして だんだん価格を下げて行く、思い切ったプロモーションもしない」という日本人の発想は どちらも一理あると思います。

 しかし、商品によっても違いますし、メーカーで気合いが入っている商品でも違いはあります。
 日本では、小売店からも「この価格(安い)で売れてるけど、高くすると売れなくなる」と意見も多く出て 市場ではなかなか「価格」の変更も難しいとは思いますし、商習慣も違います。 一番強く「売れなくなる」と言うのは、メーカーの営業マンかも知れません。

しかし、長年同じやり方の商売で固定観念が強くなりすぎて、販売方法を変えるチャレンジが出来ていない側面が強いと思います。

 「ユニクロ」は日本を代表するメーカーになりました、世界にもどんどん進出しています。
 「ユニクロ」の販売方法を見ていると、この「アメリカ人の発想」を取り入れたプロモーション価格をよく使っています。 強力な新製品(例えば数年前のフリースやドライのシャツなど)を市場に投入する時に、「プロモーション価格」を設定したり「1万名の方に無料進呈」したりしているのは アメリカ人と同じ発想です。
 キャンペーンや、プロモーション価格で多くの方が商品を購入して、街に出てそれが話題になり、口コミで「いいね」と広がって行くのです。 価格は、値上がっても売れて行くのです。  (勿論季節商品は最後は安くなりますが)
「大ヒット商品」というのは そういうダイナミックな発想で販売されているモノが多いのも事実です。

 マイケルジャクソンが亡くなった時に、完成間近だった作品の「This is it」はDVD,ブルーレイディスクで全世界で
販売されましたが、日本でも 駅のKIOSKやビクトリア(スポーツショップ)などでも販売されていました。 
 世界戦略で思い切った販売価格でリリースしたので、「販路も拡大」したのです。 
 メーカー営業マンも「この価格帯だったら こんな販路も拡大したらどうだろう」と発想を変えて 新しい販路を開拓できた結果だと思います。

 商品によって プロモーションの仕方や価格の設定が違って良いのです。
 思い切った生産量で一気にコストが下がるような性格の商品、口コミが広がる事が大切な商品、営業マンを一気に積極的にさせる必要があるような時期、会社としての評価を変えてしまうようなことが必要な時、
価格を含めて商品政策は良く練る必要があります。

いけないのは 固定観念を持って いつも同じやり方をしてしまう事です。

 貴方の会社、貴方のお店でも、「変える」ことが必要なアイテムもあるのではないでしょうか?