お客様の利便性を追求し、逆転の発想    
新機能もなくてもナンバーワンモデルになれる

柔らかい考え方を持たないとダメだと思いました

2012年3月24日

P3252134.jpg1997年頃だったと思うが、私が当時記録メディア事業本部で商品企画をしていた頃の話です。
当時は全世界向けの記録メディア製品(オーディオやビデオのテープやディスクやアクセサリー等)を企画して導入してゆく仕事だったのですが、新機能や新コンセプト、新デザインなどをいつも盛り込む事を考えながら、新製品を考えていました。
ところが、アメリカのセールス部隊から「提案&要望」がありました。それは、マイクロカセットコーダーとマイクロカセットテープ、電池を全部入れたパックを作って「まとめ売り」をしたいという提案でした。
海外では、スピーチをする際やレポートをする際に トップクラスは自分の声をマイクロカセットコーダーに入れて、それを秘書が聞いてパソコンに打ち込んでゆく いわゆる口述筆記が当時は多く、その大半にマイクロカセットコーダーが使われておりました。勿論、このマイクロカセットコーダーもソニー、オリンパス、パナソニックなど日本のメーカーがしのぎを削っていました。
当時 私の所属する記録メディア事業本部では、ハード機器ではなくマイクロカセットテープと電池を売っていたわけですが、そこにハード機器もまとめて記録メディアの事業本部が売りたいという提案だったのです。ハード機器を購入するとよく電池やテープ等が入っている事がありますが、これはハードの事業本部がテープや電池を他の事業部から購入して付属品として同梱し販売しており、ハードにテープや電池が付属物としてついているというのが それまでの電気製品の常識でした。
今回は、その逆でテープ8巻、電池(単三2本)とマイクロカセットコーダーが入って、ハードの部隊でなく記録メディアの営業部隊が売るというモノです。
ハード機器の部隊は、自分達の機器が、テープの付属品のような扱いなので 当初は少し難色もありましたが、協力してもらい何とか商品化が出来ました。
この商品を 目立つように透明のブリスターパックで中身が全て見えるようにして、お客様の利便性(それを一つ買うとテープも電池も入っているので、すぐに使えるという事をパッケージ上ですぐ分かるようにした)を高め、そしてMemoPackという名前をつけて売りだしました。Memoはちょっと記録する、Packはオールインワンという意味で愛称として考えました。
アメリカの営業部隊も自分達の提案が実現され一生懸命に商品の導入をしてゆくと、Walgreen(全米最大のドラッグストア)からもオールインワンのコンセプトなどが評価され、定番になりその他のいくつかのチェーンでも置いてもらえる事になり、なんと発売当初から全米でナンバーワンのモデルになり、それが約5年間程続きました。
中に入ったハードは既存のモデルを設計変更せず一部外装色を変えただけで使い、テープも電池も全く変えていません。 この3種類の製品を一つにして 利便性を分かりやすくして 名前を新しく付けただけです。
新開発の技術などは何もなくても、売れる商品は出来るし、お客様が望んでいるのは新開発の技術だけではないのです。 
大企業になればなるほど、一つの縄張りが出来るモノですが、その縄張りを無くして お客様の利便性を追求したら面白い商品ができる良い例だと思います。
ハードの部隊も 長年苦労して商品企画と技術の投入で市場シェア第1位を築きあげていましたが、このオールインワンパッケージだけの商品が「売れ行きナンバーワン」の商品になるとは予想もしていませんでした。
ハードの部隊がテープを入れて売るという常識から、テープの部隊がハードを入れて売るという「逆転の発想」の商品、お客様の利便性をさらに追求しただけで、何の新技術も目新しさもない機器が全米ナンバーワン しかもそれだけで当時シェアが40%くらい取れた商品になったのです。
少し、事業本部間の中でややこしい(会社としてはですが)商品だったので 私がハードの事業本部と交渉したり 事業計画を作成したり デザインや仕様を決めたり 名前をつけたり、製造所で品質チェックをしたりしましたが、面白い企画でした。 
当時の、上司の大曾根さん(当時ソニー副社長、記録メディア事業本部長)に「こういうのが企画なんだ! アメリカ人も中々良いアイデアを持ってる」と話されたのを今でもよく覚えています。
柔軟な考え方を持たないといけないと反省させられたよい事例でした。